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これからの公共と建築 -コンペ先進国スイスで創りながら学ぶ12ヶ月- トビタテ奨学生【大学生等コース】の留学ビジョン


トビタテ生情報
名前:生田海斗さん
学校:京都工芸繊維大学大学院建築学専攻修士4年
留学先:スイス
留学期間:2021年10月~2022年8月


留学内容

 時代毎に移りゆく多様な社会課題に呼応するように、国家や地域毎で優れた建築デザインを模索・達成する取り組みは独自に発達し、街ごとの景観や風土を生んできました。これからの持続可能な社会を目指すためには、建築で普遍的に必要な意匠的な美しさや合理性の評価に加え、公共発注の仕組みや設計者の選定制度、竣工後の持続性やソフト面の構造を含んだ一連のスキームとしての多元的なデザインの戦略がより重視されてきています。そこで、本分野の切り口として建築設計競技(以下:コンペ)などの⺠主的な建築生産プロセスが発達しているスイスで、約1年間建築設計者として企業に従事しコンペや実際の公共物の建築設計活動に取り組んでいます。優れた意匠デザイン・選定方式・運営体系等の設計手法を実務の環境下で学びながら、日々新しい都市や建築像を設計・提案していく事で、プランナーでありながらプレイヤーでもある研修留学を行っています。

コロナ禍で留学準備する中で感じたこと、心掛けたこと

個人ではどうにもならない社会問題による渡航の延期・中止は致し方ないことで、コロナ禍はその障壁として最大級のものだと思います。この不明瞭な社会情勢に対し、留学できる/できないを主軸に様々な学生生活の選択肢を月単位のスケジュールを組んで準備をしていました。渡航時期であった2021年夏季は本来の予定より半年以上遅くなりましたが、延期を見込んでコロナ禍中に取り組んだ日本の学生コンペや一昨年獲得した実施プロジェクトがその空白期間を埋める実践活動となり、結果として国内での実践・研究や留学テーマを最大化させることにつながりました。トビタテのような現地の現在の情報をゲットできるネットワークがあったことも大変心強かったので、校内外での渡航関係のネットワークに関与しておくとそのスケジューリングを助けてくれると思います。

渡航延期期間中に取り組んだ公共トイレの実施コンペ(ひろしま建築学生チャレンジコンペ2019)では、予算や要望をどうまとめ、利用者に新しい空間体験がつくれるかを考える機会となり、結果としてと交互の研修の量や幅を広げることができました

留学経験を生かして実現したい志

建築は多くの時間や金銭を費やし具現化できるもので、1年という期間では留学テーマを捉えるのが難しいというのが正直な感想です。しかし現在渡航11ヶ月目を迎え、少しずつ設計業務の理解や建築士として出来る事が広がり始めた実感があります。また、今回の1年間の研修+大学院の修了により現地で建築士として働くことができるチャンスを獲得することができました。現地での経験値を半端に途切れさせないように、そしてこの稀有な機会を逃さないためにも、留学後は大学院修了後にスイスに戻り現地での実務経験をもっと増やしながら同時に現地の大学でのセカンドディグリーを目指しながら、設計デザインの専門性を高めていこうと考えています。何年費やすかわかりませんが、日本国内外を横断した多様な建築のデザイン実践・研究活動を続けていきたいなと考えています。

後輩のみなさんへのアドバイス

渡航中の日々の生活や実践の中で、日本でのあたりまえが通用せず、理解できない出来事に遭遇したり大きなストレスを感じたりすることは多々あります。私はフルタイムワーカー(そしてほぼ新卒のような状態)として来たので、苦しいことが思い出の8割位を占めている気がします。思い描いていたよりも泥臭い留学かもしれません。しかしほぼ誰も自分のことを知らない。周囲からの雑音もない。そういう場所で自分の興味・熱意のあるがままに手や足を動かし続ける経験は、たとえ失敗したとしても必ず自分を成⻑させてくれます。特に海外留学はその0ベースの環境に相応しく、良くも悪くも外圧の多い日本から離れ、そうした日本そして自分自身を客観視する機会となります。上記の理由から、私は多くの方にどのような形でもいいので留学を強くお勧めしたいタイプですが、留学する/しない、どちらにせよ自分に素直な選択肢に進んでほしいと思います。

実際に提出した全体模型例。大小様々なスケールのコンペティションを経験し、
部分から全体の設計、そしてそのプレゼンテーション含め全てを担当しました。

意気込みをひとこと

私が将来携わりたい分野は何年・何十年という⻑い時間軸のものゆえに、その分まちの規範や魅力のある景観・建築物として社会に大きな影響力を持つものです。そのため初歩的かもしれませんが、まずは自分が選んだ環境に責任を持って、言語力や基本的なモノづくりの経験値・専門知識を向上させていくことに数年間は注力したいと考えています。また留学前後に抱いた野心やバイタリティに劣らない位の気持ちで、社会を横断する視野と知力を日々向上させ、建築だけでなく国際社会をフィールドとした人間的な成⻑も図っていきたいです。

スイス中部に位置するブリエンツ湖。留学中で最も記憶に残った広大なスイスアルプスの風景です。

いかがでしたか?

他にも、コロナ禍を乗り越えてトビタテ奨学生としてトビタち、留学生活を送っている若者の志と意気込みをマガジンにて配信中!
ぜひ、様々な留学を経験している奨学生の記事もチェックしてくださいね。


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