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3日目レポート~フリー視察DAY 先生方が生徒の探究のステージを開拓!~【高校等教員向け】探究型海外研修企画のためのハワイ視察プロジェクトより

3日目は、生徒が研修時に訪問できる場所、人など、探究の場、ステージを開拓するための、自由行動DAYでした。

3日目こそが本視察企画のハイライトであり、先生方は事前ワークショップの時からどこで、何をするか!?の情報交換を重ねていらっしゃいました。この記事では、何名かの先生から寄稿いただいた、めいめいの過ごし方を御紹介してまいります。

今回は、宇宙や自然環境というテーマに関心の高い学校が多かったこともあり、まさかの日帰り弾丸ハワイ島訪問が実現。それも、4名もの先生がハワイ島へ行かれました。

ハワイ島への日帰り弾丸視察に参加した、駒ケ根工業高校の林先生からのレポートを御紹介

ハワイアン航空の国内線で、朝日を浴びながらハワイ島へ!

瀬川先生、中村先生、宗像先生、記者の白江さん、林の5名で朝5時にホテルを出発、約50分のフライトを経て9時頃ヒロ空港に到着しました。
午前中、瀬川先生と白江記者はボランティアで長谷川久美子さんのもとへ。
ほか3名でヒロ高校へ向かい、日本語教師のアヤ・シハタ先生、校長先生とお会いしました。校長先生は穏やかな女性の先生で、私たちの訪問を心から歓迎していただきました。ヒロ高校1,000人ほどの生徒と100人ほどの先生方で、多くのコースが選択できるシステムを取り入れていていました。驚いたのは夏休みの中、リーダー研修として登校していた生徒たちが、日本では担任が行う新学期の様々な準備(教室の掲示やほか色々)に楽しそうに取り組んでいました。リニューアル中のフットボール場など100年以上の歴史を持つ校内の施設を見学しました。
各校との連携や交流のアイディアなど、お互いに熱気に満ちたディスカッションでした。先生方それぞれに、連携の方向性と関係構築ができたと思います。
午後はすばる望遠鏡で瀬川先生と合流し、天文学の臼田-佐藤功美子(くみこ)博士はじめお二人の研究者の方から、すばる望遠鏡の歴史や成果、銀河についての楽しい参加型講義をお聴きしました。
最後の施設見学は、標高5000mから送られてくる、リアルタイムの映像やデータなど、行ったからこそ得ることのできた素晴らしい感動や出逢いがありました。

ヒロ高校組とは別行動された長野県松商学園高校の瀬川先生より

瀬川先生と、長谷川久美子氏。Fish Pond再生プロジェクト視察

長谷川久美子氏が取り組むFish Pond(魚の養殖池)再生プロジェクトに参加するため、ハワイ島を訪問。今日の作業は、外来種の除去とハワイ固有種の定植。作業をしながらお話を伺うと、「ハワイ島は自然が多く残っているように見えるけれど、繁殖力の強い外来種が面積を広げている」「各国の天文台がマウナケアの山頂に建設されて成果をあげているけれど、火山を大切にするハワイアンはよく思っていない」など、表面的には見えない逆の視点を与えてくれた。「日本人だって、富士山の山頂に他国が建物をたくさん作ったら、嫌に思うでしょ?」科学や経済を追求するには、それによる影響を十分に理解できる人間である必要があると痛感した視察でした。

林先生は、ハワイ島に行く前夜は楽しみすぎて眠れなかった(笑)そうですが、精力的に交流されていて、実りの多い視察となりよかったです!

移民や多文化共生をテーマに深堀された、京都市立日吉ヶ丘高校の西川光先生からのレポートを御紹介

日系三世で、ボランティアdocent(学芸案内員)のJohnさん

7/22はハワイ日本文化センターを訪問し、常設展である「おかげさまで(I am what I am because of you)を中心に見学しました。
案内をしてくださったボランティアdocent(学芸案内員)のJohnさんは日系三世の方で、ご自身の祖父母の家族写真パネルなどを見せながら説明をしてくださり、日系移民の歩みがすごくリアルなものとして伝わってきました。
サトウキビ農園での労働や、家の中や学校の様子の再現、第二次世界大戦時の状況がわかるビデオ、戦後の日系移民やハワイと日本のつながりがわかる説明など、日系移民の視点でハワイにおける日系の歴史を時系列に学ぶことができる展示でした。
個人的には、展示の最後のところでJohnさんのおっしゃった「今は日系5世までいる。純粋な日系の数はどんどん減ってきていて、話す言葉も違う。ただ、世代が違っても、言葉が違っても、日系は”Value”(大事にしている価値観)でつながっている」という言葉が印象に残りました。
日本人として、今を生きる者として、次世代に繋いでいきたいValueは何だろうかということを考えさせられました。

日系人がハワイの地で作っていた和食

岩手県立一関第一高校の久保田奈奈先生は、クアロア-ランチでhawaiianの聖地を訪問、その後さらに北上してカフク-ファームへ。日系人の果樹園で海風に負けない農業を学習されたそうです。
ハワイ内をリーズナブルに移動できる手段であるThe Busで、生徒が探究活動をすることを想定し、どこまで行けるかチャレンジされていました。

南国ならではのアサイーやリリコイなどにふれられるKAHUKU FARMS
カカオの実 たわわに生っています

最後に、さいたま市立大宮国際中等教育学校の本郷舞子先生より、今回のハワイ視察プロジェクト全体で心に残ったこと生徒に伝えたいことについて寄稿いただきました。現地でも、いつも太陽のように参加メンバーを照らし、頼りない事務局の私もリードしてくれた舞子先生からの長文の(笑)熱いメッセージです。ぜひご一読ください。

このプロジェクトに参加した経緯

もともと、私自身がハワイには縁があり、日系3世の叔母がマウイ島に住んでいることもあり、毎年訪れているため知り合いが少しいた。水泳の授業の時には、着替えの速度がまちまちなため、お互い気持ちよく待ち、心地の良い環境で授業したいと考え、雰囲気作りのために、プールサイドではウクレレを弾きながら生徒を待ち構えている。
学校では、毎日ハワイのTシャツを着て授業しているため、私がハワイ好きなことは生徒も保護者も教員も知っている。日々のハワイ好きの私の行動に、同僚の先生がこの企画は絶対に行った方がいい!と見つけてくれて、推薦してくれ実現したものだった。
キャリア学習を兼ねて実施する本校の探究型海外研修では、生徒それぞれの探究テーマに合わせた完全オーダー制の8泊10日を実施する予定だ。
来年度参加する生徒には出発前に面談をしていて、それぞれの興味はどこに向かっていくのか、どのような情報が事前に必要で、現地でその学習を最大限に調査、インタビュー、体験すれば探究が深まるのか。戦争・伝統の継承(フラダンス・ハワイ語・食事)・観光と交通・民俗学・自身のアイデンティティについて、ルーツの違う民族がそのようにUNITEしてきたのかなどそれぞれの生徒のニーズにあった指導者や体験活動を実施できる場所を探しにこの視察に参加することとなった。

「繋がり」と「ALOHA Spirits」

歴史的なハワイのこと。特に興味を持ったのは、ビショップミュージアムで、人々がどのような流れでハワイに辿り着いたのか、ポリネシアの島々の単語を、台湾から始まり、ミクロネシア・ニュージーランド・ハワイへと「違い」から「繋がり」を導き出す研究の展示だった。仮説と問いを立て多角的な視点・視野で答えを導き出そうとしている代表的な研究の例を見ることができた。博物館では、先人者のそういったものの見方や考え方を研究を通して感じ取ることができる。生徒は歴史的なものや、たくさんの研究に触れることで、仮説や問いの立て方をさまざまな事例から学ぶことで、頭の使い方を柔軟にし、自ら探究に返った時に生かすことができるのだと感じた。

ハワイで研究者として活躍する樽井先生や岡田先生、高田さんはまさにMr.探究。それぞれの研究課題について条件や問題点、解決方法を紹介していただいたが、実際に、健康とBikiを結びつけ、データを回収し必要なところから順次自転車専用レーンを学生とともに街中に広げ、健康の保持増進のためのきっかけ作りをしていることを知り、探究とは、「社会をよりよくするもの」のために自分の興味関心からリソース(人・物・事)を繋ぎ合わせて社会に貢献できる何かを導き出す事なのではないだろうか。

忘れてはならないのは、ハワイのリソースには、「自然」が必要不可欠だ。子供も大人も忙しい日本人に、ハワイで暮らす人々の自然や人に向けた、“ALOHA Spirits”を感じそれぞれの大切にしていかなければならない「何か」を見つけてほしい。

強く生きていく上で何を大切にしていきたいのか、それぞれのマインドセットを形成する中で見つけていって欲しいと感じた視察だった。生徒の探究に必要な繫りはなんなのか、散らばっている探究の種を一つ一つどうやったら繋がって行くのか。それぞれの視点を想像しながら必要な栄養を与えるための肥料はなんなのか。

この視察をきっかけに、プライベートハワイでお世話になっているハワイに住む人に話を聞く必要があった。彼らの探究が、実現可能なのか。本物のフラを学ぶためにハワイで暮らし、ハラウに所属する大学の先輩や、サーフィンの師匠の元を訪れた。生徒に生の声を聞かせたい。と思ったからだ。本場のフラって、実際に来てみてどうだったのか、ハラウは何を目指しているのか。先輩がどうしてハワイに15年もいるのか、今まで聞いたこともなかったハワイに住む理由やフラにかける思いを聞くことができた。生徒の探究活動の実現に向けて、私の熱意が伝わったのか、先輩も、いろいろな分野の人を紹介できそうだから、詳細が固まってきたらお手伝いしてくれるといってくれた。サーフィンの師匠は、ビジネスライクな私をみてOHHHH舞子ちゃ〜んとBig Hugで迎えてくれた。ハワイの人にとっての海って?自然って?いつも波待ちしている時に、ふっと降ってくる自然を愛する素敵な言葉の数々。本当だったら、海の上のコミュニケーションが、一番伝わりやすいはずだが、45分くらいの講義してくれると言ってくれた。しかし本当は、身体で感じとってほしい気もしている。環境が整うことで、言葉がもっと心に沁み込んでくるのを知っているから。サーフィンの師匠に話を聞くだけでも光栄なことなのに、学生に向けたボランティア活動を企画している人にも繋いでくれるという。本当に、人と人との繋がりを大切にしてくれるのがハワイだな、と実感した。

以上、本郷先生からの視察の感想、生徒に伝えたいことについての寄稿でした!

3日目の夜は、翌日の帰国を前にしたお疲れさまディナーで熱く語り合いました。最後の振り返りピッチでは、涙ぐむ先生、スタッフも続々。ハワイへの愛、感謝と感動と充実感を胸に視察を終えることができました。
とはいえ、研修旅行をプロデュースいただき、生徒の成長を見届けるまでがゴールなので、まだまだ私たちはスタートラインに立ったにすぎません。

本プロジェクトについて、旅行業界メディア『トラベル Watch』(インプレス)さんの記事を御紹介します。視察にも帯同いただいた記者の白江ちなみさんが、心をこめて、いきいきとご紹介くださいました。是非ご一読ください。

前編

中編

後編

トビタテ×ハワイ州観光局共催のハワイ視察プロジェクトの7月組の視察レポートは以上ですが、12月組の視察や、その後に生まれた各校の探究型の海外研修についてなど、随時発信していきたいと思います。

日本の未来を担う高校生が、円安・物価高に負けず、海外へ一歩踏み出すには、学校主催の質の高い海外研修の存在が不可欠です。
探究型の深い学びのある研修を、教師自らがプロデュースすることを推奨する、このプロジェクト。
引き続き、ご注目ください。