【基礎自治体 国際交流担当者向け】勉強会・交流会を実施しました!
「トビタテ!留学JAPAN」では、留学プラットフォーム事業の一環として、基礎自治体の国際交流担当者向け オンライン勉強会・交流会を2024年2月20日に実施しました。
独自の取り組みを行っている各自治体の発表と、自由に意見交換をしていただく交流会を行いました。当日の様子の一部ではありますが、各自治体の発表をまとめたレポートをお届けします。
3つの市区町村自治体の取り組みについての発表
北海道千歳市
千歳市では現在、小中高の児童・生徒に向けた海外渡航プログラムを実施しています。元々は千歳市内の一つの小学校とアメリカ合衆国アラスカ州アンカレジ市の小学校との単一小学校同士の交流でしたが、現在では市内すべての小学校、中学校に対象を拡大しています。
また一昨年度より高校生の派遣も実施しています。
千歳市とアメリカ合衆国アラスカ州アンカレジ市との学校では相互の交流を行っており、日本側でもアメリカ人児童・生徒の受け入れを実施しています。
派遣生徒は日本語イマージョン教育を行っている学校※に派遣され、ホームステイ先も同校の児童・生徒宅となるため、英語に不安があっても参加が可能となっているそうです。また、現地渡航前には、オンライン交流を通して、現地での生活がスムーズに進むような取り組みも行っています。
※アンカレジ市には、幼稚園年長から高校まで13年間の一環した日本語教育プログラムがあり、担任も日本人、日本語を話すスピードも普通での教育が行われています。
小中学生の派遣は、現地の学校生活を体験することに重きをおき、高校生の派遣では、各自別のテーマでプレゼン発表を行うなど、能動的活動に焦点をおき、短期派遣と、約1年間留学の長期派遣を実施しています。
工夫点としては、短い期間を有効に活用するために、渡航前にオンラインやメール、動画での交流を通して、両校の交流をし、到着してからすぐに打ち解けられるようにしています。
また小中学生の派遣に対して保護者の不安解消のための取り組みもしています。訪問先の先生による保護者へのレクチャーやLINE公式を使った現地での活動の報告や連絡、また小学生派遣では保健師を同行させ、体調不良の児童の対応をするなどの対策を行い、保護者が安心して派遣できる環境を整えているそうです。
長野県長和町
長和町では町の歴史遺産である黒耀石を活かした国際交流を行っています(以下、当町の地域ブランド名として「耀」の文字を使用)。プログラムに参加する中高生は「長和青少年黒耀石大使」(英名:Nagawa Young Obsidian Ambassadors)に任命され、地域文化についてのPR活動が任務となります。任命から渡航までの1年間は故郷の遺跡について学び、日本列島の歴史や黒耀石についての理解を深める研修を行っています。
地元霧ヶ峰高原の一帯はナイフや矢じりなどの石器の原料となった黒耀石の原産地であり、質の良い霧ヶ峰産の黒耀石は旧石器時代から縄文時代の3万年間にわたって全国に流通していたことがわかっています。産地が限られている黒耀石資源がなぜ、広域に流通していたのでしょうか。研修の学びはこの謎を考えるところからスタートし、大使の任務として学びのプロセスや自ら発見した魅力を伝える活動を展開しています。
交流先は類似する歴史遺産がある英国です。現地でも互いの文化や歴史を理解するための様々なワークショップを行い、主体的な交流活動の実践を目指しています。
2023年度はオランダ経由でイギリスへ渡航し、以下の4つのミッションを遂行しました。
1:シーボルトコレクションの調査。鎖国制度が続いた江戸時代の末期に、日本文化をいち早くヨーロッパに伝えたシーボルトコレクションに長和町の黒耀石が含まれているとされていた。広い視野から国際交流の意義を理解するために、資料が現存するオランダ経由で英国に渡航し、黒耀石資料の全点について分析調査を行ったところ、シーボルトの書付がある資料はまさに長和町の黒耀石であり、また縄文時代の石器であるということが判明した。
2:双子遺跡での交流事業。長和町には星糞峠という地名が残る産地に縄文時代の黒耀石鉱山がある。英国には、時期も景観もそっくりなグライムズグレイブス(巨人のお墓)という石器の原料となったフリントの鉱山があり、類似する歴史遺産をキーワードとして両地域の交流に至った。本事業の象徴として「双子遺跡」の協定を結んでいるが、遺跡を交流の場として歴史遺産を継承する意義を確かめ合った。
3:日本の縄文と黒耀石文化を英語で紹介する派遣中高生によるプレゼンテーションと黒耀石の石器づくりワークショップの開催。今回は、教育連携の協定を結んだ博物館に所属するティーンエイジ・ヒストリークラブの子どもたちと、実行委員会や議員さんをはじめとする地域の代表者の皆さんを対象として実施した。
4:ストーンヘンジでのデモンストレーション開催。縄文文化を紹介する企画展に合わせ、石器づくりの実演と遺跡の紹介を英語のデモンストレーションとして一般向けにアピール。(当初は石器づくりワークショップ開催の依頼だったが、急遽、対話型のデモンストレーションに変更となった。)
このプログラムでは学生たちは公務を担う大使として派遣されるため、事業経費は自治体経費や助成金などを財源とし、渡航した大使達の個人負担は75,000円でした。1年おきに8名の学生が長和町から大使として英国へ派遣されています。
黒耀石体験ミュージアム – 信州・長和町 (hoshikuso.jp)
福岡県上毛町
上毛町では少年海外体験学習事業「バンコク友好の翼」として小学校6年生がバンコクに渡航し、姉妹校提携をしているチュラローンコーン大学附属小学校を訪問しています。
また、バンコクの同校からは、小学5年生が上毛町の小学校を訪れています。
渡航前にタイの文化や生活習慣を学習したり、ALTやCIRによる指導や立命館アジア太平洋大学のタイ人留学生を招いた研修を行ったりすることで、タイ渡航に向けた準備を進めています。
現地では学校交流、在タイ日本国大使館の訪問、遺跡や寺院の名所を見学。現地の学校では、現地児童とともにスポーツ、情報、音楽、美術の授業を通して交流し、交流会では食事やダンスなど、大人を含めた国際交流を行っています。
また、学校内では盛大な歓迎セレモニーが行われ、日本側児童はソーラン節を披露しています。
帰国後には、保護者を前に児童による研修での発見や学び、取り組みについての発表会を実施。渡航で知ったこと、気づいたこと、感じたことをまとめて保護者や関係者の前で発表し、活動の振り返りを行っています。
タイ側児童の訪日事業については、8日間上毛町を訪れ、学校でのレクリエーションや文化体験を通して交流を深めています。
例年行っている記念植樹会は、昨年で9年目となりました。
上毛町では、対面での交流にとどまらない交流活動として、オンラインで日本・タイ両国を結び、ダンス教室や音楽の発表会をしています。
また、両国児童が作成したオリジナル灯籠を、町内に共同で展示、点灯する取り組みも行っています。
上毛町の国際交流事業に関して詳しくはこちらをご覧ください。https://www.town.koge.lg.jp/soshiki/kyoiku/1/1_1/1/2726.html
まとめ
今回の勉強会では上記自治体発表のあとに、ブレイクアウトルームに分かれ、参加された自治体の国際交流担当同士が自由に質問しあうなどの交流会を行いました。
各ルームでそれぞれの事業の取り組みの詳細や疑問点などについて意見交換がなされました。
当勉強会では、各自治体がそれぞれの地域の特徴を生かし、工夫した国際交流を行っているのが印象的でした。これらの事例をもとに、参加されたみなさまの国際交流事業発展の一助となりましたら幸いです。
「トビタテ!留学JAPAN」では、これからも自治体のみなさまに向けた国際交流・留学促進のための情報交換や連携を応援してまいります。
引き続きよろしくお願いいたします。