人事インタビュー Vol.3 富士通さま(後編)
文部科学省が官民協働で日本の若者の留学を応援し、グローバル時代に活躍できる人材を育成する「トビタテ!留学JAPAN」。
トビタテを御支援いただいている企業の人事の皆さまに、これから求められる人材像について、大学生がインタビューするシリーズ企画です。
この記事は後編です。前編はこちらからご覧いただけます。
お話をお伺いした方
富士通株式会社
キャリアオーナーシップ支援部 部長 伊藤正幸さん
人材採用センター シニアマネージャー 末松佳子さん
インタビュアー
トビタテ!留学JAPAN事務局 広報インターン 今田恭太/難波沙和(慶應義塾大学)
グローバル化の拡大に伴い、御社の採用に変化はありましたか?海外経験を持つ人材に期待することがあれば教えてください。
末松:富士通は2000年代から変わらず、グローバル化をビジネスとしても強化して、採用としても重点を置いています。期待することとしては、まず語学力。語学力を活用して、会社のグローバル化に貢献してほしいなと思います。
もう1つは、留学って、新しい環境にチャレンジしていくっていう行動じゃないですか。留学を経験された方は困難なことにも、どんどんチャレンジをしてやりきるっていうバイタリティが非常に強いと感じています。それはどこの部署でも常に求められていることなので、どんどん新しいことに前向きに飛び込んで挑戦すること、大変なことでもやりきれる姿勢と行動力に期待をしています。
御社の中で留学経験者が活躍されているエピソードを教えてください。
伊藤:さまざまな分野で活躍してると思いますが、1番近いのは末松さんですよね。海外留学経験されて帰ってきて、自分のやりたいこと、目指す姿をしっかり描いて活躍されています。やりたいことに対して目指して、誰もフォロワーがいないところに、自分で突っ込み、やりきる行動力や意志の強さを、一緒に仕事していて強く感じます。
海外経験のある方って、やはり考え方がオープンですよね。多様性をちゃんと理解できているから、自分とは異なる価値観を受け入れる力がある。一緒に仕事をしていて、僕も勉強させてもらっています。
トビタテ難波:留学に行くと、自分の弱いところもわかるけど、それと同時に、自分の強みもわかりますよね。私はトビタテの高校生コース3期生で、高校時代に留学した経験があるんですけど、周りのトビタテ生を見てても、みんな自己ブランディングが上手ですし、他者への思いやりがある。色々大変なこともあったと思うんですけど、留学をして、自分をより知れたり、他者への思いやりを持てるようになるのが、留学のすごくいいところなのかなって個人的にも思います。
伊藤:おっしゃる通りですよね。知らない土地で生活をするということに対する難しさなど、いろんなものを経験していると思います。
ちょうど今私の部下でも、昨年5月からカナダに行ってる社員がいます。富士通はアメリカンフットボールのチームを持っていてそのメンバーとしても活躍していたのですが、「NFLにチャレンジしたい」という思いをもって、富士通に入ってきてくれました。昨年カナダのプロリーグのドラフトで選ばれました。コロナウイルスの影響でなかなか渡航できなかったんですが、つい先日やっと渡航が叶いました。
寒いし、食べ物は大変だし、日本人は全くいない。誰も気を使ってくれないし、下手したら、大学の選手と練習しろよぐらいの扱いを受けることあるそうです。ただ、2年目に入り、慣れや周りとの関係性もあって、かなり自信を持ってアピールしてやれていると連絡をもらいます。「昨年はなんとなくお客様感があったけれども、今年はもう1ミリもない、今年が勝負なんです。」みたいな話をしています。そういう人も実は富士通にはいる、富士通の面白い多様性だと思います。
伊藤:イノベーションを生み出すって言った時に、均一の考え方だと平均点が出ちゃいますよね。多様な価値観の流れだと、平均値よりもずっと大きいアイデアとか、考え方が出てくるっていうのがあるので、そこは大事にしたいと思っています。グローバル化という観点でも、日本と価値観、考え方、 文化も風習も違う中で、どうやって進めていくのかということを考える必要があります。世界中の至るところから人が集まって、ディスカッションして、イノベーションを作っていく。そんな会社を目指したいと思っています。
末松:留学経験者は、グローバルな事業に携わるだけでなく、日本のお客様に対して ビジネスを行い、新しい分野にどんどん挑戦していく力で、周りを巻き込んで活躍してる人もいます。どんなビジネスでも、 海外との連携とか、グローバルな視点があった方が広がりが持てるので、本当に色々な活躍の仕方があります。
伊藤:海外と仕事するだけが、グローバルではないですからね。
今田:ありがとうございます。海外で仕事をすることだけがグローバルじゃないっていう。「グローバル」っていう意味の広さを改めて感じるとともに、そこにアプローチされている富士通のお話を今聞かせていただきました。
伊藤: そう考えると、グローバルな働き方を実現できている会社って海外を見ても少ないのかもしれないですね。
今田:グローバルな環境だけじゃない、グローバルな働き方っていうのがすごく確かに今までなかった観点だなって思います。それは本当に実現できているのかっていうのは、なかなか実現が難しいな、という風に思います。
伊藤:本社からね、指示出して実現するのがグローバルなのかといわれると、そうじゃないじゃないですか。
末松:そうですね。現地のヘッドは全部日本から送り込んで、日本人でマネージメントしてる企業もありますけど、富士通の場合は、現地のヘッドは現地の方なので、 同じ方向に向くことが難しいこともあります。でも、それがグローバルのチャレンジだと思っています。
伊藤:そうそう!一緒に仕事するの、すごく大変ですよ!本当に大変!先週も夜9時から、ヨーロッパと時間合わせて、世界中の現地スタッフと話すんですけど、「なんでこんなことやんなきゃいけないのか」みたいな、そんなことから、お互い意見を作りあげていく。もちろん進むのは早くはないですけど。ただ、ある日「こんなことやったらいいんじゃないの。」みたいな提案をしてきてくれたりするんですよね。
難波:現地の方をトップに置くことで、声を上にもあげやすいからこそ、スピード感を持って、イノベーションに繋げることができるんですね。
伊藤:グローバルでやろうとしてる最初の頃、自分の感覚ってこう「involve(参与する)」って言ってたんですよ。周りを巻き込む、向こうを巻き込むと思っていたので。
でも、一緒に進めていくという部分でinvolveではないと今は思っています。
今田:真のグローバルとは何なのか、グローバルで働くということであったり、 あるいは世界中と一緒になって進めていくことの難しさやその強さをお話を聞いていて感じました。大変そうではある中でお2人がすごくでも笑顔で話されているのが印象的です。
伊藤:うん、そうですね。仕事は末松さんも一緒だと思うんですけど、楽しんでやるっていうのが共通点だと思っていますし富士通には、そういう人が多いです。先ほど紹介をした「ジョブチャレ」という制度は、若手女性社員のアイデアで運営されています。社内インターンに似た仕組みは、一部の本部とかでやっていた経験はあったのですが、それをちゃんと全社に広げて、やっていこうっていう仕組みにしたのが彼女です。そんな彼女もすごく楽しそうに仕事しています。
大学時代に留学を経験された末松さん。留学の経験を振り返って今、仕事に生かされていることはありますか?
末松:大学4年生の時にイギリスに1年留学を経験しました。帰国後に就職活動を行い、大学には5年間在籍していました。富士通に入って最初の3年ぐらいは日本のビジネスを行っている部署で勤務していたため、語学力やグローバルでの経験を生かす場所はそこまで多くありませんでした。
その後、グローバル人事という部署に異動しました。当時の上司は英国人で、他のメンバーも海外にいる人が多かったです。海外の方々とチームを構成して、制度を企画していく経験をしました。
私はグローバルっていうところに小さい頃から興味があって、留学を経験しました。入社して、最初は直接的には関わることはありませんでしたが、留学経験があることによって海外に興味がある、英語がある程度出来るということが認知され、グローバル関係の部署にアサインされたんだなとは思っています。
線をつくらず、仕事にチャレンジできる。
実際に海外の方と一緒に仕事をする経験を通じて得られたことは、「どんな仕事をしていても、日本だから・海外だからという線をつくらずに、仕事にチャレンジできる」ということです。今、どんな仕事をしていても、「ここは海外と連携した方がいいんじゃない。」とか、「海外どうなってるの。」という問いかけがあります。
その際に、過去のグローバルな経験があるからこそ「海外のこの人に聞いてみよう!」とか「こう連携してみよう!」といったアイデアを実行に移すことができる。それによって、自分の仕事の中で、「これをもっとやった方が絶対意味があるよね。」っていうことにどんどんチャレンジしていける。線を引かずに仕事ができることは、自分にとっても仕事が楽しくなりますし、組織にも貢献できます。そういった「線を引かない」ということの大切さは、留学やグローバルな仕事の経験から得られました。
また私は子供が2人いるので、育児休暇を2回取っています。復帰後は短時間勤務を経験しました。育児中は時間をかけてパフォーマンスを上げることが出来ないという環境にいました。時間は限られている、その中でどうやってパフォーマンスをあげるかというと、自分のスキルに頼るしかないですよね。
そんな中で自分の英語力や海外の人と一緒に働いて、仕事を進められる力は私の強みとなるスキルになりました。当時は全員がその領域をできるわけでなかったなと。短時間勤務でも大事な仕事を任せてもらえるっていう環境に自分の身を置けたので、 そういう分かりやすい、他者が持っていないスキルを身につけられると、自分の身を守れる強みにもなるんだなと感じました。
採用時に語学力をどの程度重視していますか?
先ほど申し上げた通り、富士通では現在ジョブ型雇用を行っています。そのため語学力がすごく求められるポジションもあれば、頻繁に求められないポジションもあります。統一的に、語学試験の点数だけで採用は決定していません。ただ、やはり自分の強みとして、語学力が高いっていう方は、 積極的にプラス評価をしています。
社内では、語学力を活用しようと思えば、どのポジションでも可能性はあります。海外のソースを使った情報収集や、論文やビジネスケースを海外に英語で発信することもできますし、もちろん実際にビジネスの中で使うこともできます。
お二人から学生へのメッセージをお願いします。
伊藤:そうですね、学生ならではのチャレンジってあると思うんですよ。それを思いっきりやってほしいと思っています。とにかくいろんなことにチャレンジしてみて、自分の可能性を広げるということが大事だと思います。社会人になってからだと、やりたくてもできない時ってあったりしますから。
最初から丸くなるな。と伝えたいです。最初から丸いととんがろうと思った時にとがれないし、とんがれたとしてもちっちゃな三角になっちゃうじゃないですか。そうではなくて、大きなとんがった形でいると、最後削るときに大きな丸が残るから、できるだけ大きな尖りを持つ。
そのとがりの先に自分が行きたい企業とか、やりたいものっていうのが見つかることもあると思います。 正直言って、富士通も一通過点でしかないと思います。自分のこうやりたい、チャレンジしたいことっていうのをしっかり見定めて、 その方向性が富士通とともにあった時には、ぜひ一緒に働ければと思います。
末松:やっぱり、好きを大事にしてほしいっていうのはあります。 人によっては、留学を経験したから、就職後もグローバルな分野で生かさなきゃと思い、自分で自分の選択肢を狭めているケースがあったりとかもあると思います。反対に、留学もしていたけども、留学経験とは関係ない仕事でもなんでもしますっていう人もいるんですけど、 どっちもほんとにそれで大丈夫?と思うことがあります。
自分はどういうことをしたいか。自分で自分のことを知って、これをやりたいっていうところにまっすぐ向き合っていってほしいなと思います。直接的じゃなくても、どこかで「グローバル」と、重なり合う時期が出てくるので、ここはまずは自分の好きなことというところを大事にして、守りに入らないでほしいなと思います。