情報を見極めよう 〜トビタテ!留学安全対策講座シリーズ 第1回〜
留学に安全に挑戦するために役立つ知識をお伝えする、
「トビタテ!留学安全対策講座シリーズ 第1回」は…
偽情報に惑わされない視点をもつための
「フェイクニュース対策オンラインセミナー」のレポートです!
海外留学が気になるので留学先や何かできるかを調べたい! けれど正しい情報を見極めるにはどうしたらいいの…?
と少し不安なみなさん!
ニュースやSNS上の情報リスクから身を守りつつ、うまく付き合っていくためのポイントを解説します。
2023年12月に開催したオンラインセミナーの内容を、インターンの堀江がお伝えします!
講師は、ジャーナリストでメディアコラボ代表、古田大輔さんです。
まずは冒頭の答えから。「正しい情報を見極めるにはどうしたらいいのか」のヒントですが……「一発でわかる答えはない」ということです! これを見れば全体安全というものはなく、絶対騙されない方法もない。絶対に信頼できる情報を探そうとする人は騙される!
そこで、それらを回避するために知っておいた方がよいことをお伝えします。
ポイントは以下の4つ!
ネットに溢れる情報を見極める力、大切ですよね。
例えば、2016年のアメリカの大統領選挙では、フェイクニュースがネット上で広まりました。
もちろん日本でも同じようなことが起きています。
身近な問題ですが、実際は学校教育でもあまり触れられていないのが現状。
「自分たちが、実は知識不足なことをまず自覚しよう!」
というのが、講師の古田さんからのメッセージです。
Topic 1 : SNSのアルゴリズムを知ろう
SNSや動画サイトを眺めていると、自分が好きなコンテンツが次々に流れてきませんか?
ダンス動画が好きでよく見ていたら、おすすめ欄が踊ってみた系でいっぱいになっていた…なんていう経験があると思います。
これには、サービスの「アルゴリズム」が関わっています。
なるべく利用者が長い時間使いたくなるように、コンテンツを自動でそれぞれの好みにパーソナライズする仕組みが作られているのです。
一見便利なこの機能ですが、副作用もあります。
1つ目は「フィルターバブル」。
アルゴリズムに「フィルター(選別)」された情報でできた「バブル(閉じた世界)」ということ。
パーソナライズされたおすすめ欄に溢れる情報は、自分の価値観や興味に沿ったものばかりで、視野が狭くなりかねません。
2つ目は、アルゴリズムでは、情報の質やフェイクを選別するのがまだ難しいこと。
アルゴリズムがおすすめするコンテンツは、視聴回数やクリック数の多いバズった投稿が多くなります。必然的に、極端な情報に触れる機会が多くなります。そもそも、インターネット上で発信される意見は強いものになりがちで、現実を反映しないこともしばしばあります。
自分が使うツールの特性を知って、一歩引いてみることが大事ですね!
ところでフェイクニュースは、3種類に分類されることを知っていますか?
「誤情報」は、勘違いをしたり、出来事の全貌が見えていないまま情報を拡散するのが一例です。
「悪意ある情報」は、間違った情報ではないものの意図的に印象を操作しようとします。引用文や写真の切り取りで、文脈が変わって見えることも…
「偽情報」は、意図的に作られた誤った情報のことです。
AIを用いて作られた、まるで有名人が喋っているかのようなフェイク動画が拡散したこともあります。
健康的な食品についての情報を流していたインフルエンサーが、影で食品会社から報酬をもらっていた…なんてことも。
今スマホやパソコンで見ているコンテンツは、誰がどんな意図でつくり、誰が何のために発信したのか?を理解したうえで情報に接していますか?
情報の背後にある背景を考えるのが、次のステップです!
Topic 2 : クリティカルシンキング=吟味して考えよう!
キーワードは、「リテラシー」と「クリティカルシンキング」です。
リテラシーは、ある分野について理解し、活用する能力を指します。メディアリテラシーというと、メディアを理解して活用する能力のことです。
リテラシーと切っても切れない関係にあるのが、「クリティカルシンキング」。
自分の感情や意見に左右されずに、注意深く考えること、つまり吟味することをクリティカルシンキングと言います。
気をつけたいのが、
英語のcritical thinkingの直訳は「批判的思考」ですが
「クリティカルシンキング」≠ むやみな批判、反対 ということ。
むやみに情報を否定したり、論破しようとしたり、議論を避けたりするのは批判的思考ではないので注意!
人間は2通りの方法をつかって、視覚、聴覚、文字情報…あらゆる身の回りの情報を処理しています。
大抵のことは省エネのためにシステム1が担っています。
より効率よく生活するため、放っておけば本当はシステム2で考えるべき問題も1の思考回路に流れていってしまいます。
例えば留学先を決める時、なんとなくよく耳にするからカナダにしようかな、と印象で決定してしまうことはないでしょうか。
少し面倒に感じるかもしれませんが、じっくり考える時は意識して向き合ってみましょう!
ここまで吟味の話をしてきましたが、実際どのようにすればいいのでしょうか。
下の表を見てください。
誤情報を誤りだと思った人の多くは、正しい情報も誤りだと認識してしまっています。
間違えないように、と「批判的」に見すぎた結果、正確な判断ができなくなってしまっているのがわかります。
何も信じられなくなった結果、「誰か【正しい情報】を教えて!」という態度になってしまうと、偽情報を信じ込みやすくなってしまうのです。
吟味や検証に重要なのは、様々な分野の幅広い知識を持つこと。
前提となる知識に基づいて判断できているか? 誰かに判断を委ねてしまっていないか?と、自分自身のことも吟味してみましょう!
前提となる知識とは…
Topic 3 : 実は情報を歪ませているのは自分?
情報を、自分が受け取るときに歪ませてしまっている?!
人間は誰しも「バイアス」(偏見)を持っています。
個人的な意見や無意識の思い込みが判断に影響を与え、不公平なく結論を出してしまうことです。
偏見や先入観とも言い換えられます。
セミナー動画では、自分が持つ無意識のバイアスチェックができる問題を紹介しています! ぜひこちらの動画もご覧ください!
特に「確証バイアス」は情報収集の上で壁になります。
自分の考えに似ていたり、自分に都合のいい情報ばかり集めてしまい、好きなものとは異なる情報を無視してしまう傾向が私たちにはあります。
Topic1で確認した、好みの情報ばかりをおすすめするSNSのアルゴリズムと相まって、似た情報ばかり見てしまいがちになるのです。
自分が偏っていること、それを手に入れる情報自体にも影響していることに気をつけましょう!
Topic 4 : ファクトチェックの4ステップ
まずはこれだけはやってほしい、具体的なファクトチェックについて、この4つのステップを実践してみましょう!
特に、発信源を絞り込むには、Googleの高度な検索が有効です。
政府や地元の行政機関のサイトだけに絞り込んだり、この一年間の情報だけに限定したり、といった使い方ができます。
「完璧にしよう!」と気負わずに、少しずつより確からしい情報を引き出せるように4つのステップを使ってみてくださいね!
Q&A コーナー
当日の参加者からのご質問について、古田さんに答えていただきました。
一部をご紹介します。
Q. ChatGPTは信用できますか?
A. 役には立つけれど、必ずしも正確ではないでしょう。
生成AIは、今世界にある情報を学習するため、バイアスも同時に学習してしまっていることにも注意が必要です。例えば、医者の絵をリクエストすると男性ばかりが出力されたりします。そのまま鵜呑みにすることはできないと思います。
Q. 情報が多くて疲れてしまいます。自分のキャパが小さいのでしょうか?
A. 単純に情報が多いのだと思います。疲れるから、と情報収集を諦めることはできますが、それでは自分の損になってしまうことが大半です。上手な付き合いかたをするのが大事です。
Q. 自分自身のバイアスを外すにはどうしたら良いですか?
A. 自分の中のバイアスを理解する、と置き換えるといいと思います。ある情報に触れた時、「心地よい」と思ったなら、あなたのバイアスに一致したからです。どうして心地よく感じたのかを自問自答してみると、自分の偏りが客観的に見えてくると思います。
誰しもがバイアスを持っています。無くそうとするよりも、自分の特徴を理解するとよりよく付き合えると思います。
情報を見極めよう 〜トビタテ!留学安全対策講座シリーズ 第1回〜
いかがでしたか?
・インターネットやSNSの特徴:パーソナライズ機能など
・自分自身のバイアスや考え方の偏り
を認識することが大切ですね!
完全に情報から距離を置くことは難しいでしょう。留学準備には、情報収集は必須ですよね。
発信元や情報の信頼性をチェックしながら、より確からしい情報と上手に付き合っていきましょう!
古田大輔氏 プロフィール
ジャーナリスト/メディアコラボ代表
福岡生まれ、早稲田大卒。朝日新聞記者、BuzzFeed Japan創刊編集長を経て独立し、ジャーナリストとして活動するとともに報道のDXをサポート。2020-2022年にGoogle News Labティーチングフェローとして延べ2万人超の記者や学生らにデジタル報道セミナーを実施。2022年9月に日本ファクトチェックセンター編集長に就任。その他の主な役職として、デジタル・ジャーナリスト育成機構事務局長、ファクトチェック・イニシアティブ理事など。早稲田大、近畿大で非常勤講師。ニューヨーク市立大ジャーナリズムスクール News Innovation and Leadership 2021修了。