気候変動問題は待ったなし!世界トップレベル大学で「森林回復過程」の研究に挑む~コロナ禍の留学リアル体験談~
松尾 智成 MATSUO Tomonari
大学名(国):ワーゲニンゲン大学(オランダ)
留学期間:2020年4月~2024年3月(予定)
留学内容:熱帯地域における耕作放棄地での森林の回復過程とそのメカニズムの解明をテーマに、オーストラリア、メキシコ、ガーナの熱帯湿潤・乾燥地域で研究活動を行っている。 EUのPANTROPプロジェクトという国際的な研究プロジェクトチームの一員(博士課程)。
コロナ禍でも渡航し、留学をしようと思ったきっかけは?
日本の大学の修士課程在学中に、「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」の奨学金を活用して、ワーゲニンゲン大学に留学しました。メキシコの熱帯林での森林回復過程の研究も行い、気候変動問題の深刻さや、それに対する研究の緊急性、熱帯林の自然回復の気候変動問題に対するポテンシャルを感じました。その経験から、この分野で世界トップレベルの大学に行き、研究を続けることが、環境分野の諸問題解決に一番近いのではと感じ大学院へのリアル留学を決意しました。
コロナ禍ゆえに大変だったことはありますか?
コロナ禍で主に苦労したことは、オランダへの入国制限と海外でのフィールドワークが制限されていたことです。
留学の開始時期がコロナと重なったため、オランダへの入国がとても大変でした。京大での修士論文を終え、一足先に上記のPANTROPプロジェクトでフィールドワークをオーストラリアで開始していたところ、コロナが広まり、フィールドワークを中断して、オランダへの早めの渡航を決意しました。決意したのが四月頭だったため、日本での感染者もまだ多く日本からヨーロッパへの渡航は禁止されていたため、オーストラリアから直接オランダへ渡航する必要がありました。しかし、オーストラリアで6ヶ月のフィールドワークを行なってからオランダへ渡航する予定だったため、オランダで生活するための荷物はもちろん、ビザの発行やオランダでの住居も十分に準備していない状態での渡航となり、彼女の家に転がり込んでの留学開始でした。留学先がトビタテ留学時と同じであったため、友達や教授陣を知っているのはもちろん土地勘もあり、渡航後はあまり苦労せず過ごすことができました。しかし、専門分野が熱帯林生態学ということで、コロナによる渡航制限の影響を大きく受け、今年の二月にようやくガーナにフィールドワークで渡航することができました。ガーナ渡航は叶ったもののコロナと中国企業が行ってきた違法鉱山の影響で、ガーナ人から差別をされることは時々こたえています。
逆に、コロナ禍でも渡航して良かったと思うことはありますか?
博士学生や指導教官とより良い関係を築けたと思います。というのも、コロナの影響で、大人数で会う機会は激減し、小人数でご飯会をする機会が増えたため、一人一人との距離感が近づきました。また、大学も長期間閉鎖されていたため、指導教官とのミーティングは毎週、教授の家で行ない、よりリラックスした状態でミーティングを行うことができました。また、コロナの影響でオーストラリアに渡航することが叶わず、ガーナでフィールドワークを行うことになったのも、良い経験になっています。現在、ガーナ滞在6ヶ月目に入りましたが、コロナがあったからこそ、これだけ長期でガーナでのフィールドワークを行うことができています。ガーナでのフィールドワークは、今まで東南アジアや中南米での熱帯林での小規模のフィールドワークで経験してきたこととは大きく異なり、大規模のチームをリーダーとしてまとめる必要もあり、チームマネジメントなど研究以外の面も学ぶことができ、とても刺激的(かつしんどい)フィールドワークとなっています。今まで、東南アジアや中南米、はたまた日本でも見たことあるような樹木や植物とガーナで出会うことも、フィールドワークでの楽しみです。
将来のビジョンは?
将来の夢は、熱帯林の自然回復を通して、気候変動問題に対処することです。この夢を実現するために、海外での博士課程を修了後も研究者として、熱帯林の自然回復に関する知見を収集し、気候変動問題に対する政策決定に貢献できればと思っています。
コロナ禍に渡航しての留学を検討している方へアドバイスをお願いします。
コロナ禍での留学は、今までとは違った苦労も多くなるとは思います。しかし、それはそれで逆境体験という意味では成長につながると思います。また、自分のやりたいことが海外でしかできないのであれば、コロナを言い訳にせず、どうにかしてでも海外に留学・渡航するべきだと思います。強い意志を持った決断であれば、コロナ禍でも周りは全力でサポートしてくれると思います