スウェーデン留学→東急に就職 田中麻理子さんの就活とキャリア
田中さんについて
「以前から誰もが暮らしやすいまちづくりに興味を抱いていました。トビタテ!留学JAPANの制度に支援頂き、留学ではスウェーデンで福祉的・持続的観点でのまちづくりについて学んできました。帰国後は憧れていた東急に入社し、現在は歌舞伎町の開発計画に携わっています。」
障害児だったかもしれない自分。
英語は教科として好きでしたし、いつか海外で学んでみたいという気持ちはありましたが、私を留学に導いた原体験として強いのはむしろユニバーサルデザインへの想いでした。
実は私は、大変な難産で生まれ、障害を持ってもおかしくない状態だったそうです。それを聞いて育つうち、社会的に弱者と呼ばれる人たちが住みやすい社会の基盤を作ることに興味を持つようになりました。「せっかく健康に生きられ散るのだから、将来は障害者等、社会的に弱者となってしまいやすい人たちにとっても暮らしやすいまちづくりをしたい。」そう漠然と考えるようになっていきました。
高校生くらいには自然とインフラ業界を目指していて、中でも東急は小さい頃から東急沿線で暮らしていたこともあり、無意識の間に愛着を抱いていました。
英語「で」学ぶ 大学院でスウェーデンへ。
大学進学時から「いつか留学したい!」と思っていましたが、もともと大学院へ進学するつもりだったので、学部時代は専門知識と英語力を身につけることに集中しました。
学部ではなく院で留学しようと思ったのは、ベースを身につけてから留学したかったこともありますが、英語で学べる環境が欲しかったこともあります。英語圏以外に留学する場合、ゼロからその国の言葉を学ぶのは大きなハンデになります。研究したいテーマがはっきりしている場合、大学院の研究室であれば英語で学べる可能性が高いと考えました。
実は、大学受験をした時から英語は得意。大学在学中には1~2週間の東南アジアでの短期留学を経験していました。勉強してきた英語を使って外国の友人とコミュニケーションできることが嬉しかったのを覚えています。一方で、短期留学の目的は英語「を」学ぶことです。それもあって、大学院では英語「で」学ぶ留学をしようと決めていたのです。
留学先を悩んでいた頃、実際にスウェーデンに留学した先輩から体験談を聞き、スウェーデンのまちづくりに興味を抱くようになりました。スウェーデンに留学したら日本のまちづくりを見直すきっかけにもなるかもしれないと考え、留学先をスウェーデンに選びました。
留学先のスウェーデン王立工科大学は建築・都市計画分野で有名で、世界各国から優秀な理系大学生が集まります。様々な国の人と意見交換することで、自分の視野を広げたいと考えていました。実際、スウェーデンでは多様なバックグラウンドを持つ人が共生していました。「どこ出身?」「何系のスウェーデン人なの?」というような質問を聞くことはあまりありません。それぞれ異なる個性を持つことが当然とされている環境では、トイレも男女別で分かれている訳ではなく全て個室で、サインもグレーで統一されるなど、住んでみて初めて気づかされることも多くありました。
寮のメンバーでパーティー
(タイの友人の誕生日にタイと日本の国旗のクッキーを作りました)
都市計画の授業後に教授と友人と撮影
共同で調査した教授と
留学時代の友人が日本に来てくれました
現地で学んだ「誰にでも優しいまちづくり」。
大学では「日本のまちづくりに北欧の風を(福祉的・持続的観点でのまちづくり)」をテーマに、CPTED(Crime Prevention Through Environmental Design:防犯環境設計)という概念について文献を読んだり、アンケートを実施したりしながら、防犯につながる安全・安心な街の設計手法について学びました。また、GIS(地理情報システム)を用いて、地理的特性や人口分布、公共施設の場所などを把握し、どこで一番自転車に乗るかを考えて、レンタサイクルのシステムを提案しました。留学を続けるうちに、スウェーデンで学んだことを日本で活かしたいという気持ちが強くなっていきました。
プライベートではトビタテ!の事前研修で与えられた「自作の名刺を現地で100枚配る」というミッションにも取り組みました。名刺を渡した人のうち、約40人から日本へのメッセージを貰いました。
留学中に就活を行い、官民双方の内定を獲得。
留学の影響で、他の学生と同じように就活のプロセスを歩めないことには多少の不安を抱いていました。留年せずに卒業するため、留学前からOBOG訪問や業界研究を重ねました。
留年せずに卒業するには留学中に選考を受けなければならず、その点は少し大変でした。webで時期を逃さず情報を追い、応募することはもちろんですが、試験や面接はwebでは実施してもらえない場合も。実は、留学中盤には就活のために一時帰国もしました。
東急と並行して、同じくインフラに携われる省庁も受けました。面接で留学生活について聞かれた時は、私がスウェーデンで学んでいたまちづくりや、それをなぜ日本で活かしたいと思っているのか、なぜこの企業・機関で活かせると思うのか、熱意を持って伝えていました。
省庁では学部時代にアルバイトを経験していた背景もあり、官民双方の内定を頂きました。最終的に民間企業である東急を選んだのは、民間の方がより自由な発想でまちづくりに携われるのではないかという点と、省庁では土木職での内定を頂いていたこともあり、「土木」寄りのインフラよりも、コンテンツを含めた「まちづくり」に関わりたいと思ったからです。
実は東急を受ける際にも大変なこともありました。選考を受けるにあたり、まずはマイページ登録が必要だったのですが、スウェーデンに住んでいたため日本の電話番号を持ち合わせておらず、会社にそのことを電話で問い合わせたのです。もちろん選考は平等に行っていたはずですが、入社後に聞いた話では、その時のことも印象に残っていたとか(笑)。留学生活と並行した就活はこのような不便が発生することもありますが、問い合わせればきちんと対応していただけることもあり、早めに準備をしていれば普通に進めていくことができました。
東急で学び続ける日々から見えてきた目標。
社会人1年目は東急グループ内での研修があり、渋谷駅にて鉄道業務にも携わっていました。2年目からは、歌舞伎町一丁目地区再開発計画に携わっており、劇場、ライブホール、映画館などの複合エンターテインメント施設の他に、ホテルやレストランなどの宿泊・交流機能を一体的に整備することで観光拠点を創出することを目指しています。また計画地に設置する屋外ビジョン・屋外ステージと、隣接するシネシティ広場を一体的に活用し賑わいを創出することで、歌舞伎町のイメージを向上させ、国内外からより多くの方に来て頂くことでエリアの回遊性を高めていくエリアマネジメントにも関わっています。
歌舞伎町のお祭りにも参加
留学時代の友人とちゃんこ鍋
東急に入社してからも、留学で培った英語力、多様性への理解力、スウェーデン式デザインへの知識は日頃の業務に役立っていると感じます。特に多様性への理解力は、国籍・人種・LGBT・年齢といった多様性に溢れている歌舞伎町について考える際には不可欠です。また、スウェーデン式のデザインについて実際に上司にプレゼンする機会もありました。
今関与しているプロジェクトはあと3年くらい掛かりそうなので、地元の方にも歌舞伎町のことを教えて頂きながら、「世界のエンターテイメントシティ歌舞伎町」の実現に向けて引き継ぎ励んでいきたいと思います。
留学時代の友人に日本の紹介
留学時代の友人とお寿司
留学時代の友人を歌舞伎町に案内
田中さんの就活タイムライン
田中さんからのメッセージ
田中さんの留学についてもっと知りたい人へ
トビタテ!留学JAPAN公式ホームページで公開されている留学大図鑑から体験談を読むことができます。
※留学大図鑑とは…海外にトビタった経験を持つ1757人(2021年2月現在)の留学体験談をもとに、計画の立て方や課題の解決方法を検索できるサイトです。留学を検討している人は是非活用してみてください!