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「トビタテ! 留学JAPAN 事後研修」基調講演で、株式会社パロマ代表取締役社長兼会長の小林弘明様に御登壇いただきました。

 株式会社パロマは、皆様も御存じの通り、ガスコンロや給湯器を製造するグローバル企業です。その起源は1911年にさかのぼる老舗メーカーです。小林弘明様は、4代目でいらっしゃいます。

キャリアの始まりは4年間の米国勤務から
積極的に語り合う時間を通じ信頼関係を構築

 小林様のキャリアは、大学卒業後の1992年、23歳から4年間、パロマ社がアメリカで買収した会社で勤務された時代からスタートしました。アーカンソー州というアメリカ南部ミシシッピ川流域にある、大自然に囲まれた地域です。パロマの傘下に入ってからまだ4年目の会社で、お互いの信頼関係を築きつつどう経営を軌道にのせ、どう利益を生み出していくかというミッションを背負って奮闘されたといいます。

ビジネスパーソンとしての原点、米国赴任体験を語る小林弘明様

 その当時印象的だったことのひとつに、メキシコ出身の若者の野心溢れる積極的な姿勢がありました。日本人はもちろん、米国人スタッフも彼らの熱意に感化されていたとか。小林様自身も、仕事時間内での積極的なコミュニケーションはもちろん、普段は無口で職人気質なスタッフとも、共に食事をとるなどして腹を割って語り合う中で、立場や国籍を超えて本音を言える関係を構築し、そのことが業務の改善にも繋がっていったそうです。

アメリカ勤務時代の同僚との貴重な記念写真

失敗からの学び
全ての過程に責任をもつ、という考えかたへ

 米国時代のお話の後は、パロマ社の大まかな歴史についてご説明いただき、その中でも特に「失敗からの学び」というテーマでお話いただきました。ひと昔前のことになりますが、給湯器の安全装置を修理事業者が不正改造したことに起因する事故が起きてしまったのです。

 当初は「検査に合格して出荷した製品なのだから、それはパロマの責任ではない」という見解もありましたが、「お客様が使用し終えるまでのすべてのプロセスに責任をもつべき」という考えに変わっていったといいます。
 そうして課題を可視化し改善を重ねる組織へと体質変革を推進していく中で、キーワードとなったのが「垣根を壊す」ということでした。大きな会社には部署ごとの独自の考え方や、守るべきものが積み上がり、風通しが悪くなりがちです。部署を横断して対話するチームを設定し、客観的な意見を交換できる環境を創ることで、垣根を壊し、課題解決に向けて進む組織を作ることの大切さを教えていただきました。

知財、人工知能、ビジネス、教育など、多様なテーマで留学してきた学生からの多様な質問

 後半の質疑応答では、挙手した学生からの質問に答えてくださいました。日本におけるワークライフバランスの展望や、次世代への権限移譲の難しさをどう考えるか、アフリカ等世界展開の可能性など様々な角度からの質問がありましたが、ここでは2名の学生との質疑応答をご紹介します。

台湾で知的財産について学んだ、宇田川智里さんからの質問

宇田川さんの留学テーマは「日本を売り込む”国際弁理士”になるために」

 宇田川さんは、販売後に改造されたことについてまで、メーカーが責任を負わなくてはいけないのは、あまりにメーカー側のリスクが多すぎるのではないか?という趣旨の質問をしました。
小林様からは「メーカーは何かトラブルがあるとどうしても消費者の使い方に問題がある、誤使用だ、という言い方をしたがるが、それでは根本的な改善に繋がらない。流通の過程も含めて起きたことを自責と捉えることが大切です」という旨をお話いただきました。

シンガポールで人工知能と宇宙工学の知識を生かした人工衛星を作る研究をしている小澤翼さんからの質問

 小澤さんは、言語の壁がある国際チームのインテグレーションをどう図るか、について質問しました。外国人と日本人が、議論する中で途中から母国語を話し出したりして分裂し、壁ができてしまいがちで苦労した経験があるそうです。
これに対し、小林様は「優秀な技術者は自分の専門性の垣根を越えてコミュニケーションをとるべきものだが、どうしても自分の世界に閉じがち。そこで、リーダーシップを持つには、ひとりひとりのバックグラウンドやタイプに目を配り引き出すことがとても大切。風通しがよいことが非常に重要でそういう場の雰囲気を作れたら心が開かれやすい。ただ、それを限られた時間やコミュニケーション手段の中でどう実現するかは永遠のテーマで、もがき苦しんで前に進んでいくしかない、共に頑張りましょう」と温かいエールを送ってくださいました。

質疑応答の後、小林様も一緒にトビタテポーズで記念撮影しました!

 講演や質疑応答の時間が終わった後の休憩時間も、小林様の周りを多くの学生が囲み、対話が続いていました。全ての問いに、丁寧に、時にユーモラスに答えていただき、会場は前向きなエネルギーに包まれました。

 

お忙しい中、お時間をいただいた小林様に、心から感謝申し上げます。
ありがとうございました!